全て”すき…”から始まった…。

　”ガチャン”亮が、玄関のドアを開けた。

　亮の気持ちは、決まっていた……。

　「おかえりなさ～い。今日ね、お客さんでね、」

　カオリが、話しかけようとしたが、亮は、それを

　さえぎった。
　

　「カオリ…別れよう……ごめん…別れよう…。」

　亮自身、何て、話せばいいかわからず、

　そんな言い方しか、出来なかった…。

　


　「！！？えっ、なんで！！！どうして？？？」

　カオリの一番怖かった言葉だった…。



　「亜美…子供…産んでるんだ…俺の子…かも？……ごめん…。」



　「……どうして！どうして亮の子なの！！！亜美さんとは、

　なんの関係も無かったんでしょ？？？」


　「…ごめん…カオリと結婚する前…

　一度だけ…あったんだ…ごめん……。」

　亮は、カオリの顔を見ずに、窓の外の景色の

　方を向きながらそういった。


　　
　「…うそ！！！………ひどい……ひどいよー！！！

　亮…ひどいよ………。」

　カオリは、亮から出てくる言葉が、信じられなかった。

　正確には、信じたくなかった。

　自分の中の何かが、壊れた…。

　周りの景色も、亮の顔の表情も、

　なんか、全て、関係のないもののように、

　感じた。

　思考が、止まってしまっていた。




　「本当に…ごめん……。」

　呆然と、立っているカオリに、そう言って、

　亮は、家を出ていった…。


　しばらく、カオリは、動けなかった。

　後を追いかける事もしなかった…。

　時間だけが、過ぎた。

　涙が、少しずつ、頬を伝ってくる…。

　カオリの中の気持ちは、悲しみというよりも、

　絶望だった。

　終わる時は、簡単に…終わってしまう……。