全て”すき…”から始まった…。
 ”ピンポーン”


 「は~い、どちらさまですか?」

 亜美は、玄関を開けた。

 目の前に、亮が立っていた。


 「どうしたの?」



 「マンマ、マンマ、……。」


 亜美の後ろに、はいはいしながら、赤ちゃんが、顔を

 だしている。

 それを、ただ、亮は、じっと見ていた。

 しばらく、沈黙があり、


 「俺の子…なの?…」

 亮は、亜美の答えを待った。

 「だったら、亮兄、どうするの?

 亜美と、結婚してくれるの?」

 「…。」

 亮は、答えられない…。

 「無理だよね、カオリさんがいるもんね、

 亮兄、亜美が引っ越した時、本当は、

 ほっとしたでしょ?わかるよ、付き合い長いもん。

 亮兄の心の中には、カオリさんがいるようになって、

 亜美の存在は、少し負担になったんでしょ?

 だから、私の知らないうちに、結婚したんでしょ?

 私、亮兄が、結婚する事を、自分の両親から

 聞いて、ショックだったもん。もう少し、

 亮兄の近い所に、自分の存在があると、

 思っていたから。」


 「…ごめん…。自分でも…よくわからないんだ…。

 亜美は、大切な存在で、カオリの事は、すきだし…。」


 亮の言ってる事は、矛盾していた。


 「ヒィック、エン…エン…イッ、エン……。」

 後ろで、赤ちゃんが、泣き出していた。

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