days
10年。
長いようで短い、あたしの人生の半分近く。
「……色々、あったよね」
あたしの言葉を、テツはどうとらえたかはわからない。
「いっぱい、迷惑もかけた」
「……もういいよ」
テツはあたしにとって、お兄ちゃんみたいな人。
同い年なのに、落ち着いていて、穏やかなその口調ははじめて会った頃から変わらない。
「立川にさ、言っとかなきゃいけないことあんだ」
出会ったころから変わらない、真っ直ぐで優しい瞳。
そういや、学校のかっこいい四天王の一人、なんて言われてたこともあったっけ。
「言っておかないといけないこと?なに、そんな改まって」
運ばれてきた、食後のコーヒーに、口をつける。
「……シュン、結婚するんだって」
「……そう……」
コーヒーはもう、その温もりを失っていた。
それはまるで、あたしの心みたいだった。