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「昨日、寝ちゃった?」
朝から、慌てた様子の屋良くんが、あたしのクラスにいた。
周りはざわざわとざわめき、何人かの人はニヤニヤとこっちを見ていた。
急に恥ずかしくなったあたしは、屋良くんの手を引っ張って教室を出た。
向かった先は、少子化にともなって、空き教室となっている木造の教室。
隣は家庭科室で、人の出入りはほとんどないに等しい。
「……こんなとこ、よく入ろうと思ったね」
周りの視線をなんとも思わなかったのか、屋良くんはいたってマイペースに言う。
「屋良くんは、恥ずかしくないの?」
「なにが?」
「きっとみんなに、冷やかされるよ」
「それのどこが恥ずかしいの?俺と立川は、付き合ってる。恥ずかしいことなんてひとつもないね」
あたしのくだらない悩みは、屋良くんに一蹴された。
「堂々としてりゃ、いいんだよ。堂々と」
「……変な噂とか流れたら?」
「そんときゃ、そんとき。別に悪いことしてるわけじゃないしね」
「……前向きだね」
「俺のモットーは、ポジティブに生きることだからね」
屋良くんといると、自分が少しだけ、強くなれる気がした。
これが、恋だとしたら、恋ってなんだかこそばゆい。
もぞっとして、だけどあったかい。
そういうものなんじゃないかと、自分なりに考えてみる。