そして僕は恋に墜ちた
1.
白の上に、赤が落ちる。

汚れの無い白は、赤に侵略され、一瞬にして色を変える。
白いキャンパスに、赤い絵の具をぶちまけたような光景。

辺りは一瞬、静まり返り、そして悲鳴が響き渡る。

道に転がる体は、赤く染まった雪に、急速に体温を奪われ、蒼白くなって行く。



僕はこの絵を、上から眺めるのが好きだった。


騒然としているのは、その周辺のみで、その場から少し遠くへ目をやると、何も知らない人間が、せかせかと歩いているのだ。

点滅している信号も、待て無い様な、余裕の欠片もない人間達が。


< 1 / 143 >

この作品をシェア

pagetop