そして僕は恋に墜ちた
頭の片隅では、冷静な僕が、どうにか僕を現実に目を向けさせようとしていたが

もうひとりの僕は、夢から覚めようとはしない。

きっと、生まれて間もない赤子が殆ど眠っているのは、現実を受け入れられないからだ。


母親の中から、いきなりこの世に放り出された現実を
自分の生きて行く世界が、こんなにも薄汚れているという事実を

受け入れたくないのだ。

だから、ひたすら眠る。


現実を受け入れられない、今の僕の様に。

現実から目を逸らしたい一心で、眠るんだ。


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