そして僕は恋に墜ちた
いや、生きるとか死ぬとかいう表現が的確なのかは分からないけれど、僕の心臓は、止まる気配すら無い。

やっぱり、悪魔は簡単には死なないのだ。



僕は恐る恐る、アリスの方へと手を伸ばし、顔にかかる髪をそっと横へと流す。

アリスは、苦痛に顔を歪ませるでもなく、安らかに眠っているようだ。

触れるとまだ暖かい。


『アリス…』


そっと抱えようと、アリスの首の下に手を滑り込ませる…

と、僕の指先に脈が触れた。


はっとしながらも、間違いかと思い、アリスの首元にぴたりと指先を付ける。



…脈はある。


アリスは生きている。



さっき、アリスの腕の中で聞いた、心臓の音よりも力強く、アリスの心臓は動いていた。


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