そして僕は恋に墜ちた
「ねぇ、羽根っ子。今日はどんなお仕事してきたの?」

『…羽根っ子って呼ぶの、やめてくれないかな?』

アリスの質問にはあまり答えたくなくて、僕は話題を変える。

僕の仕事なんて、人に話せる様なものじゃない。
それに、何度聞かれても『今日も人を殺して来たよ』と、言うしかないのだ。

「ふーん。じゃぁ、羽根っ子の名前教えてよ」

『…名前?』

アリスの言葉に、一瞬言葉が詰まった。


名前…そんな物は無い。

確かに、人間だった頃は名前があったはずだけど、もう長い間呼ばれて無かったし、悪魔に名前なんて必要無いと思っていた。

「羽根っ子?」

何も言わない僕を不思議に思ったのか、アリスが僕の顔を覗き込んだ。

< 12 / 143 >

この作品をシェア

pagetop