そして僕は恋に墜ちた
しん、と静まり返った廊下に、ゆっくりとした、少し引きずる様な靴音が響く。

その音は、まっすぐこちらへと向かい、そしてアリスの病室の前で止まった。

僕は咄嗟に、開きっ放しの窓から外に飛び出し、窓の横の壁にぴたりと身を寄せると、それと同時に病室のドアが開いた。


窓からそっと覗くと、白髪で腰の曲がった、初老の男が入って来るのが見える。

真っ白な白衣と、首から聴診器を下げている事を見ると、この病院の医院長の様だ。


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