そして僕は恋に墜ちた
「夢なんです…先生。綺麗な顔した悪魔の男の子。私が名前を付けてあげたの」

そう言って、アリスはにっこりと微笑んだ。




…夢?


その一言に、足は床と同化した様に動かなくなり、僕は医師の少し後ろでたちつくす。


アリスには、僕はもう見えていない様だ。

こんなに近くにいるのに、目すら合わない。



「よく分からないが…体調がいいのは良い事だね」

医師は、アリスにそう笑いかけると、ドアの方へと歩いて行った。

途中、僕の横を通って行ったが、医師の背中を笑顔で見送るアリスの視界に、僕が入る事は無かった。



僕はここにいるのに…


アリスにとって僕は、夢で見た存在になってしまったんだ。

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