そして僕は恋に墜ちた
心にポッカリと穴が開いた様な喪失感。

肉親を無くした人間は、こんな感じなんだろうか。

僕は無意識のうちに、大悪魔をそれほど近い存在に思っていたのだろうか。

絶対的な力に恐怖すら覚える一方で、それでも僕は大悪魔を求めていたのだろうか。


人間の頃だって、僕には父親と呼べるものがいなかった。

だけど、悪魔になって何十年も大悪魔の下で過ごすうちに

僕は見た事の無い、父親というものを重ねていたのかもしれない。

そうで無ければ、この喪失感は説明出来ない。

あんなに疎ましく思っていた存在が消えた…そのはずなのに。



大悪魔への反発心は、反抗期の様なもの?


『…ははっ』


いつまでも幼稚な自分に、笑いが込み上げた。


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