そして僕は恋に墜ちた
今声を出すと、震えてしまうだろう。

それに、涙が流れてしまうかもしれない。

口を開けば、きっと感情的になってしまう。



これ以上大悪魔に弱い部分を晒したく無くて、僕は大悪魔に投げ掛けてやりたい言葉を飲み込んだ。

…今更な気もするけど。


『で。私のいない数日間、お前は何をしていたのだ?』


僕の内心をよそに、大悪魔は以前と変わらない威圧的な態度で話した。

僕は、一瞬間を置いてから口を開く。


『何って…今までと変わらないですよ。いたって普通です』


本当の事を言ったら、間違いなく馬鹿にされる。

まさか、一日中この部屋に籠って、大悪魔の気配を探っていたなんて口が裂けても言えない。


『ふぅ…ん』

大悪魔はそう言うと、薄ら笑いを浮かべて楽しそうに足を組み替えた。

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