そして僕は恋に墜ちた
『それと、もうひとつ…』

恥ずかしさから、置き物の様に直立している僕に、大悪魔はさらに追い討ちをかける様に話し掛けた。

『私は、そんなに老けていないだろう?父親ではなく、せめて兄くらいにしてほしいものだな』

そう言うと、にやりと笑い片目を瞑る。


こっそり覗き見ていただけで無く、頭の中まで覗いていたなんて。


…なんて悪趣味。





回らない脳を抱える様な気分で視線を外し、僕は大悪魔に背を向けた。

『あ…の、僕…ちょっと出て来ます』


冷静を装ったつもりでいたが、うまくいかない。
本当は、大声で叫びながら走り去りたいくらいだ。



< 139 / 143 >

この作品をシェア

pagetop