そして僕は恋に墜ちた
「寂しいのね」

『悪魔だしね』

僕の態度が気に入らなかったのか、アリスが頬を膨らませる。

そんなアリスの姿を見て、もし人間に恋愛感情を抱いたとしても、アリス相手は有り得ないと思った。

(まだまだ、子供だよな)


「もーいいよ。ねぇ、そんな事よりさ、名前!」

またも、話の流れを無視して、アリスは急かす様に、そして少し悪意を込める様に、僕の袖口を力一杯引っ張る。

引っ張られた衝撃で横に揺られながら、僕は口を開いた。

『…名前かぁ』

遠くを見つめながら、でも何を見つめるでも無い僕の視線を、アリスの目が追う。

「うん。名前!…無いの?」

僕の視線の先に、何も見つけられなかったアリスは、また僕の顔を覗き込んだ。

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