そして僕は恋に墜ちた
『まったく…どうしたっていうんだ?』

きらりと光る黄土色の目が、僕の目を捕らえる。

『別に、何でもありませんよ』

目の前の悪魔に、軽い恐怖を覚えながらも、僕は何でもない素振りで答えた。

いくら同じ悪魔だといっても、相手はもう1200歳を軽く超えた、大悪魔だ。

人間界でいえば、社長とヒラ位の違いがある。

『最近のお前の成績は、低級悪魔以下だぞ』

『はぁ…そうですか』

無理も無い。

最近の僕は、人間界に降りては、アリスとあの屋上でくだらない話をしていたのだから…

『それとも…じっくり時間をかけたい獲物でも見つけたか?』

そういうと、目の前の大悪魔はにやりと笑った。

悪魔の僕ですら、背筋が凍る位冷たい顔で。



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