そして僕は恋に墜ちた
『そんなの、いません』

慌てて訂正したが、何でも見透かす様な目をまともに見る事が出来ずに、僕は足元に視線を落とす。

小さな沈黙の中、目を逸らしていても痛い程感じる視線をどうにかしたかったが、ただ俯いて時間が過ぎるのを待つ以外、僕には出来なかった。


『あの娘…アリスと言ったかな』

『…え』

アリスの名前に反応し、僕は顔を上げる。

『お前、あの娘に惚れたか?』

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