そして僕は恋に墜ちた
少年は、死を覚悟したのか、僕が近付いても怯む様子も見せなかった。

だが、両手は小刻みに震えている。

『何で、死にたいの?』

僕は、出来るだけ優しい声で少年に話しかけた。

「理由を言わなきゃ、死んだら駄目なの?」

『そういう訳では無いけど』



自ら死を決意した人間が、一体どんな事を思っているのか。

僕の事が見える人間は、一体どんな気持ちでいるのかを。

単に知りたくなっただけ。

今まで、ただの一度も聞いた事が無かったから。



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