そして僕は恋に墜ちた
「…僕は、言いたくないよ」

そう言って俯く少年の腕には、火傷の跡や、赤や紫色した痣がある。

いじめか、虐待か…

理由はそんな所だろう。

『いいよ。無理には聞かないさ』

僕は、更に少年に近付くと片手を差し出した。
少年は、その手に無言で震える手を乗せる。

『大丈夫、一瞬だよ』

僕は少年の手をしっかりと握ると、フェンスの上へ、ふわりと飛び上がった。



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