そして僕は恋に墜ちた
僕らがフェンスの上部に立つと、フェンスはぎしりと音を立てる。

少年は、遥か下に見える、車が行き交う道路を覗き込むと、繋いだ手に力を込めた。

『恐い?』

「少し。でも平気。死んだら楽になれるんだ…僕は生まれ変わって、それで…きっと幸せな人生が…」

自分に言い聞かせる様に、ぶつぶつと話す少年に

『うーん。それはちょっと違うかなぁ』

と、言うと、僕は少年の手を握ったまま、ふわりと少しだけ浮き、少年の正面へと移動した。


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