そして僕は恋に墜ちた
8.
どれだけの時間、僕は少年を眺めていたのだろうか。

何だか、時間の感覚が分からなくなっていたが、少年の血の広がり具合からして、ほんの数秒しか経っていない様だった。


ふいに、カチャンと、ドアの閉まる音が耳に入り、僕は顔を上げた。

屋上の入口に、逆光で黒く見える人影がある。
回らない頭で、今度はその人影を眺めていると、黒く見えるそれが口を開いた。

「…シロ?」

消えそうな位小さなその声に、僕ははっとする。

ゆっくり、人影の元へと降りて行くと、その顔が次第にはっきり見えて来た。

『アリス…』

僕が声を掛けると、アリスはびくりとして、一歩後ろへと下がる。

「何…してるの?」

『仕事だよ』

ぐらぐらと揺れる頭で、僕はアリスの言葉に答えた。



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