そして僕は恋に墜ちた
瞬きをしながら、天井を見つめるアリスは、僕が横に立っているとは、気付いていない様だった。

無表情なアリスの横顔を眺めていると、ふと、僕のことが見えなくなったのではないかという、錯覚に陥る。

『…アリス?』

何だか、よく分からない恐怖心を覚え、掠れた声で、僕は声をかけた。

しかし、反応はない。
ただ、天井を見つめ、呼吸の度に、胸を動かすだけだ。


もう一度声をかけようかとした時、アリスはゆっくりと、僕の方へと顔を向けた。

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