そして僕は恋に墜ちた
「昔の事を。ずっとずっと遠い昔の事だよ」

アリスは、少し俯き加減で口を開いた。
細くて綺麗な長い髪が、はらりと顔にかかる。

顔の前で揺れる髪を見ながら、僕は考えていた。


たかが高校生の言う、ずっと昔というのは、どれほどのものなんだろう。

5年か、10年か。

アリスの中の一番古い記憶だとしても、僕からしてみれば大して古い話では無い。

アリスが産まれて来るずっと前から、僕は悪魔だったのだから…

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