そして僕は恋に墜ちた
僕は、そう自分自身に言い聞かせ、アリスに近付いた。

アリスと、少しの間隔をとり、僕は瞳を覗き込む。

澄んだ瞳に、間抜けな顔の僕が映った。

瞳から、アリスの中へと入ろうとするが、何か不思議な力が働いて思う様に前には進めない。

その間、アリスは抵抗するわけでも無く、身動き一つせず、僕の動きを見守っている様だった。


頭の中に、入って行けない。

アリスの中が見えない。


こんな事は初めてだ。
ただの人間なら、簡単に入り込めるのに。

頭の中に入って、誰もが持っている、黒い部分を突っ突いて暗示をかける。
そうやって、今まで沢山の人間を操って来たのに。





アリスは人間じゃない。

気付いてしまったその事実に僕は、どうしたら良いのか分からなくなった。

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