そして僕は恋に墜ちた
「そんな顔しないでよ。私は、今は人間だもの。ただ少し、力が残っているだけ…」

少し寂しそうな笑顔で、アリスは呟いた。

僕は、よほど酷い顔をしていたのだろうか。



いや、違う。

もしかしたらだけど、アリスは僕の心が読めるのかもしれない。

だが、人の心を読めるのは、力の強いごく一部の悪魔だけのはずだ。

僕の知っている限り、他人の心が読めるのは、大悪魔しかいない。

それくらい絶対的な力が必要なのだ。


僕がアリスに目をやると、アリスは何も言わず、僕から視線を逸らし、そして少し目を細めた。


『やっぱり、僕の心が読めているんだね』


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