そして僕は恋に墜ちた
12.
冬の日は短く、病室の中は、廊下から差し込む蛍光灯の光によって、辛うじてアリスの輪郭が分かる程になっていた。

アリスの表情までは、分からない。

その方がなんだか落ち着く気がしたが、流れる沈黙を破りたくて、何となく口を開く。

『電気…付けようか』
 
そういって、ドアの方に歩き出した僕を、アリスの言葉が止めた。
 
「付けなくていい」

『……え?』

「明るいと、シロの目が見えるでしょ?目を見ると、どうしてもシロの心が読めちゃうから。勝手に人の心を知りたくないの」

『そっか…うん』


正直ほっとした。

暗い方が落ち着いたし、何より心の中を知られる心配も無い。
 
知られて困ることは、特に無いとしても、ひょっとしたら僕自身が気付いていないかもしれない心まで覗かれるのは、正直相手がアリスだとしても嫌だった。



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