そして僕は恋に墜ちた
『うん、平気』

僕は上の空でこたえた。

誰かの声を借りている様な感じだ。



僕は雲の中なんかでは無く、まだアリスの病室にいたみたいだ。

窓に足を掛け、最後の挨拶を済ませて、後はここからかっこよく飛び去るだけの状況で。


このまま
飛び出すだけの…



だけど、どうしてもアリスの大悪魔に対する気持ちが知りたい。

前の僕なら、たとえ気になったとしても、そんな素振りさえ見せない様に去っていただろう。

クールでいたかったし、人の言葉ひとつで動揺しているなんて思われたくない。



僕はどこまでも、カッコいい悪魔でいたかったんだ。


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