先生と教官室
「あ、の……先生?」
「あのさ。」
やっと先生が口を開いた。
つい今さっきまで聞いてたのに、何だか久しぶりに聞いた感じがする。
「…なんですか?」
「……伊緒、」
ドクンッ
「え?あの…せ…んせ?」
なにが起きているのか解らない。
「特別だから。」
「え?」
「苗字じゃなくて名前で呼ぶの。…お前だけ、特別だから。」
そう言って、先生は私の頭を撫でる。
「あの…せ「だぁー!!」」
私のかすかな声が先生の大きな声で遮られる。
「もう喋るな、発言禁止!!早く体育館いけっ!!練習始まる時間だろっっ」
えーーーえーーーえーーー何て勝手な。
自分だけ言って私には発言禁止ですかいな。
しかも、何故か先生は耳まで真っ赤にして照れてるし。
自分から言い出したのにね。
その姿がちょっと面白くて、可愛い…かも。
離された手で落ちたジャージを拾い、そのままの足取りで体育館へと向かった。