先生と教官室





つかまれた腕と撫でられた頭に、まだ少し感触が残っている。






まるで触れられた所から熱を帯びていくように、身体中がポカポカしていく。






先生の手、でかかったな。






それに、すごく心地よくて……。






まるで全てを包みこまれているようだった。






「…………っっ」






何でだろう。






何で私、今こんなにも胸がきゅうっと苦しくなってるんだろう。







嬉しいだけのはずなのに。






先生に特別って言ってもらえて、ただただ嬉しいだけのはずなのに。







駄目だ、私。







何も望んでなかったはずなのに、今のでどんどん欲張りな事を思い始めてる。







本当は、許される事ならもっと触っていて欲しかったとか。






頭を撫でられながら、さっきみたくずっと話しがしていたかったとか。






自分が自分じゃないみたいに、どんどん想いが溢れてくる。







おかしい、こんなの私じゃない。






期待しても意味がないのに、先生の特別には深い意味なんて無いって解っているのに。







嬉しい気持ちと冷静な気持ちがぶつかり合って気持ちの整理がおいつかない。








……あぁ、そうか、そうなんだ。








これが、「好き」って事なんだ。







さっきの事で、気づいていなかった先生への自分の気持ちを知ってしまったんだ。








どうしてくれるの?先生。








もうこの気持ちに気づかないふりなんて出来なくなっちゃったよ……。














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