先生と教官室
名簿から伊緒の住所を調べ、追いつく為に急いで向かう。
あれから30分も経ってるし、もしかしたら家に着いているかもしれない。
でも、それならそれでいい。
まずは俺の話しより、伊緒が無事に帰る事の方が大切だから。
傘もささずに夢中になって走っていると、当たり前のように鞄も服もベタベタになっていた。
「あ………」
10分位走っていると、道の真ん中にうっすらと人影が見えた。
あれは…伊緒だ。
うっすらとしか見えないが、絶対にそうだ。
走っていた足を止め、歩いて距離を縮めていく。
すると、少しずつ視界がハッキリとしてきた。
「……伊緒?」
お前、なんて顔してんだよ。
まるでこの世界に自分1人だけのような、そんな孤独に満ちた顔するなよ…。
「片瀬!!」
早くそんな表情を壊して、いつもの笑顔になって欲しくて、俺は思わず叫んでしまった。