先生と教官室





「俺と秋山先生は昔からの知り合いなんだ。」





先生が下を向いて話し出す。





「秋山先生は、俺の友達の彼女だったんだ。良いだろって、そいつに自慢されたのが初めて会った時。俺達は大学3年生だった。」





秋山先生と、そんな昔からの知り合いだったんだ…。





「それから何回か3人で遊びに行ってる内に大学内でもつるむようになって、普通に楽しい生活を送ってたんだ。」






時折笑顔を見せる先生が痛々しい。





きっと、楽しい生活の時の記憶は、先生にとって大切なものなんだろうな…。





「でも……知り合って半年位たった時……」





先生の声が少しだけ小さくなった。





「そんな楽しい生活は……俺のせいで一気に崩れてしまった…。」





私はただ頷くだけ。





うんうんって。






「ある日、秋山先生から電話がかかってきたんだ。ついて来て欲しい所があるって…。」






「…うん。」






「案内された所は産婦人科で、力を貸して欲しいと言われた。」





産婦人科…?





「俺の友達じゃない人の子供ができてしまったから卸したい。…父親のふりをしてくれ、と。」





は?





なにそれ、浮気したって事?





先生の友達を裏切ったの…?





「初めは俺もふざけるなと思った。それに、せっかく宿った命を捨ててほしくなかった…。」





…先生らしいね。






「だけど……。」












< 173 / 391 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop