先生と教官室
涙を拭いて、恐る恐る通話ボタンを押した。
「も、もしもし……。」
『あ、伊緒…?…その、今大丈夫か?』
あぁ、先生だ。
先生の声だ。
求めていた先生が少しだけ近くにいるように感じる。
さっき拭ったばかりの涙が溢れてくる。
「せ……せ、……っっ」
『…おい?ちょ、どうした?伊緒、何かあったのか?』
「先生……っ、今、どこにいますか?」
『え…学校の教官室だけど……。』
時計を見ると、すでに夜の21時を回っていた。
「すぐに行きます、から……お願いです、待ってて下さい。」
『え、まぁ俺は別にいいけど…。でも、親御さんが心配す……』
ブチッ
先生が話している途中に電話を切り、部屋を飛び出した。
先生に逢える。
それだけの事がたまらなく嬉しくい。
ばれないように下に降りていくと、リビングにはお母さんの姿と仕事の用意がなかった。