先生と教官室
「…待て伊緒。それって、いい匂いなのか?」
「はい!!」
いつも私をドキドキさせてくれる匂いだもん、いい匂いに決まってる!!
「あ、そういえば今テスト週間だったな。」
「え、あ、はい…。」
急な話題変更に戸惑いながらも、先生に返事を返す。
そういえば、明日もテストだっけ…。
「全部終わったら教官室においで。その時にはお母さんとの話し、ちゃんと聞かせろよ?」
身体を離して私の目を見る先生が、フッと優しく私に微笑んだ。
「………はい、頑張ってみます。」
「あぁ。でも、頑張りすぎなくてはいい。辛かったら今日みたいに俺に頼っていいからな。」
「はい。」
「よし、じゃぁ帰るか。車で送るから、おいで。」
「え、エスパーの答えは聞かせてくれないんですか?抱きしめ返したら答えてくれるって…。」
「今答えるとは言ってないだろ?テスト終わったらな。」
「………そんなのずるいです。」
「ははは、楽しみは後にとっといた方がテスト頑張れるだろ?ほら、行くぞ。」
「……はい。」
そう言って私に向かって差し出される大きな手に、ゆっくりと自分の手を重ねた。