先生と教官室





「…伊緒、ごめんね。」






さっきまで笑顔だった母の顔が、いきなり真剣な顔へと変わる。






「え?なに…急にどうしたの?」






思わず飲んでいたココアを吐きそうになった。






だって、お母さんの口から『ごめん』なんて言葉を聞いたことなんてないし…。






でも、お母さんが私に謝っている理由は解っている。






それでも解らないふりをしている私は、ただその部分に触れるのが怖くて逃げているんだろう。







「お母さん、仕事がうまくいかなくって…それで、さっき伊緒に八つ当たりしてしまったわ…。」







「……………うん。」






「お酒に酔った勢いで沢山酷い事も言ってしまった…。」







「………………。」







「ごめんね、伊緒。いつも私達を困らせないように良い子にしててくれたのに…。お母さん、それを解っているのにも関わらず伊緒に嫌いとまで言って…。」








「……もう、いいよ。」







さっきはただただ嫌いと言われた事がショックで、泣く事しかできなかった。







絶対許さない、私だって2人の事なんか嫌いだ、とも思ってた。







でもね…今は違うんだ。













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