先生と教官室
『甲田先生って彼女いるの?』
え、何で。
急にさっきの皆との会話が頭をよぎってきた。
先生の事考えてるからかな。
それとも、こんなにも近くに先生がいるから?
…あ、そうだ。
今こんなにも近くにいるんだもん、この機会をチャンスだと思おう。
ずっと気になる位なら、いっその事聞いてみよう。
「……あの、先生。」
「…ぅおっ」
さっきまで暴れていたはずが急に静かになった私に安心していたのか、突然声を出した瞬間、先生は驚いたような反応を見せた。
「…その、いいんです、か?」
心臓の音が、さっきの倍以上に高鳴ってる気がする。
「は?」
「こんな事してると、彼女に怒られますよ?」
顔が見えてる訳じゃないけど、何となく先生の反応が想像できる。
きっと、今は眉間にしわを寄せて答えを探してる。
「なんだよ、それ。」
自分から聞いたくせに答えを聞くのが怖くて目を閉じていると、いつもより少し低めの声が聞こえてきた。
その声が更に私の緊張を煽っていく。
先生に聞いてはいけないと思っていた事を聞いてしまったからだろうか。
先生を怒らせてしまったんじゃないかと、違う怖さがどんどんと襲い掛かってくる。