先生と教官室
沢山の言葉を先生にかけたけど、やっぱり先生は目を覚まさない。
「はぁ………。」
顔を離して机の方に視線を向ける。
なんでだろう、先生が飲んでいるコーヒーはとても美味しそうに見えてしまう。
いつもは全く飲めないコーヒーも、先生の奴は不思議と飲みたくなってしまう。
物音をたてないように手を伸ばし、コップを掴む。
そして、少しだけコーヒーをゴクリと飲んでみる。
「うわ、やっぱり苦……」
「それ、俺のコーヒーなんだけど?」
「っっ先生!!」
「何勝手に飲んでんの?」
「…先生、まさか嘘寝して…い、いつから起きていたんですか?」
「んー最初っから?」
は?最初……っから?
「じゃぁ、もしかして…さっきの全部聞いて…たん、ですか…?」
寝てると思って話した内容全部…。
「さぁ、それはどうだろう。」
「……ばか。」
「ん?なんて?」
「先生のばかって言ったんです。」
あぁ、なんて恥ずかしいんだろう。
あんな事、聞きたいと思ってはいても、いつもなら聞かないのに。
だから、聞かれてしまった今、ばかはせめてもの恥ずかしさを隠すための照れ隠し。
「伊緒。」
「はい…。」
呼ばれた方を見ると、先生が手招きをしていた。