先生と教官室
沈黙の空間を破るように、先生へと話しかける。
どんな言葉なら先生が怒らないとか、もうそういう事すら何が正解か全く解らない。
「みんな言ってますよ。甲田先生は何でもできてかっこいいから、彼女がいて当然だって。」
私もみんなのこの言葉に納得できた。
先生は何でもできるし、若い上にかっこいい。
そんな人に彼女がいないなんて、おかしいもん。
ぎゅっ
「え……せんせ?」
緊張でこわっばている私の身体を、先生は少しだけ力を強めて抱きしめなおした。
「あの、いい加減離して下さい。こんな事されても辛いだけで…もうこんな思いは嫌なんです。」
あれ、私なに言ってるの?
彼女がいるかだけ聞くつもりが、自分の気持ちまで伝えてしまうなんて。
どうかしてる。
先生も絶対困って……
「伊緒、こっち向け。」
「え?」
「話しを聞く時は相手の目をみなさい。」
うぅ……今日の先生はずるい。
今までに見せた事ないような顔を見せてきたり、急に子供っぽくなったり。
今度はいつも通りの先生に戻るし。
これじゃドキドキしすぎて壊れてしまう……。