先生と教官室
ファミレスの裏で、震える手と上がる息を整える。
何で電話ってこんなにも緊張するんだろう。
「………もしもし。」
大きく息を吸ってから、先生の電話へと出る。
『あ、もしもし…。』
すると、電話越しからする昨日ぶりの先生の声が、私の不安を少しだけ和らげてくれた。
『今電話してても大丈夫か?』
「はい、少しなら…。何かあったんですか?」
『…いや、何かあったとかじゃないんだけど…ちょっと逢いたいなと思ってさ。』
「え?」
『あ、無理にとは言ってないぞ。ただ時間あるか聞いてみただけだ。』
そんな…私が先生に逢いたくないわけないでしょ?
まして、先生からそんな事言われたら無理矢理にでも逢いにいっちゃうよ。
「…私も、先生に逢いたいです。」
逢って、今すぐにでも抱きしめてもらいたい。
いつもの優しい声で名前を呼んでほしい。
『…今どこ?家か?』
「いえ、駅前のファミレスにいます。」
『それって、誰かと一緒にきてるんじゃないの?こっち来ていいのか?」
「…大丈夫です。今度きちんと埋め合わせします。」
理由は恵那に上手く言ってもらおう。
埋め合わせは何がいいかな、考えておかなきゃ。
『解った。じゃぁ近くのスーパーで待ってて、迎えに行くから。』
「…はい。」
ピッ
先生との電話を切った瞬間、どうしようもないくらいに胸がドクドクと高鳴っていた。
いったい、私は何に対してこんなに胸を高鳴らしているの…?