先生と教官室
「嘘ですよね?ただ私をからかってるだけで…だってこんな…ありえない。」
「んーん、本当。」
そう言って先生は、今度は正面から私を抱きしめる。
どうしよ、涙でそう。
諦めていた人が少しだけ近づいた気がして、まだ希望があるようなそんな気がして…。
こんなにも嬉しいと思える私はおかしいのかな?
「せんせ…」
一瞬だけ、先生の身体へと手をまわす。
「……!!」
すると、その行動に驚いたのか先生の身体から一瞬力が抜けた。
その隙を見て、私は先生を突き飛ばし教官室を飛び出した。
もう耐えるのには限界だった涙を零しながら、ばればいように一生懸命走り去った。
後ろの教官室からは、『片瀬』と呼ぶ先生の声が聞こえた気がした。