先生と教官室
「え、ちょっと伊緒だよね?どうしたの?」
「っっ!!!」
聞きなれた声に、身体が反応する。
見られたくないという気持ちと、急に声をかけられた事への驚きで身体がビクッと上下に動いた。
いつまでも下を向いている訳にもいかず、ゆっくりと声がしたほうに顔を上げる。
「恵那……。」
そこには、戸惑った顔をしている恵那の姿があった。
誰にも見られないように裏庭の隅で泣いていたのに。
恵那は私に気づいたんだね。
普段は誰も来ない場所なのに、何で今日に限って恵那は通りかかったのだろう。
もしかして、帰りが遅くて探してくれてたのかな。
「ごめ…っ、今戻るね。」
泣きやまなきゃ。
早くしないと恵那が困っちゃう。
「…………っっ」
頭ではそう思ってるのに、涙はとまる事を全く知らない。
とまる所か流れ続ける一方で…。
「伊緒。」