先生と教官室







「僕、以前甲田先生が話してくれた片瀬さんの家庭状況を聞いて思ったんです。片瀬さんのような家庭で育ってきた子供は、どれだけのことを我慢して、遠慮して、気遣ってきたんだろうって。そんな家庭で過ごしてきた子供は、嫌でも自分のことを話さなくなるんじゃないかって。」






「つまり、元々は素直だった伊緒の性格は、家庭環境によって変わってしまったということか?」






飲んでいたコーヒーを机に置き進藤先生に質問すると、進藤先生も同じようにコーヒーを置いた。






「はい、そんなところです。生まれつき素直じゃない子供なんていませんからね。それに、片瀬さんのように親に嫌われたくないと思っていたら、余計に我慢して良い子でい続けようと思ったんじゃないですか?」







あ…そういえばあいつ言ってたな。






悪い子と思われたくなくて良い子を演じてたって。






苦しそうに、でもそれが当たり前かのように…。






「でも、今は家庭状況も変わって両親とも仲良くなれたって言ってたんだけどな…。」






もしかして、お母さんとの事を話してくれたあの時の笑顔は偽物で、全て嘘だったのか…?






「きっと、直ぐには変われないんですよ。性格って癖と同じで早々直るものじゃないですし。」







さっきまでの俺の不安を一気に消し去ってしまった進藤先生の言葉は、今の俺にとっては何でも書いてある教科書のようだった。







「…なるほどな。」






性格は癖と同じで変わりにくい…か。






確かに、俺も今の性格を直ぐに治せと言われても難しいな。














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