先生と教官室





私が先生を呼ぶと、それに答えるように少しだけ身体を離した先生が私を見つめた。





ジッと私を見る大きな目に、今すぐにでも吸い込まれてしまいそうな気になる。





「名前…。」





「え?」





考え事をしている時に急に発せられた言葉が頭にうまく入ってこない。






名前…って、どういうこと?






「俺のこと、名前で呼んで…伊緒。」






「え……。」





先生の言葉に、一気に胸が高ぶる。






名前でよんでって…流石に苗字でって事じゃないよね…?





「え…先生…?」






一度も呼んだことのない緊張感からか、胸の高ぶりが収まる気配がみえない。





「はやく、伊緒。」





先生、自分の名前を呼んでもらえるようにわざと私の名前を連呼してるのかな…?






「………あ、あの…。」






「うん?」






だめ―――っっ、そんな顔で見ないで下さいよ――っっ!!






ドキドキして何も言えなくなっちゃいますからぁ!!









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