先生と教官室






甲田翔也…翔也さん……。






先生の名前、やっと言えた。






「うん、それでいい。よくできました!!」





「きゃっ!!」





先生は照れる私を強く抱きしめ直しながら、くしゃくしゃと頭を撫でる。






「本当はさん付けもいらないんだけど、今日はそれで許してやる。」






「え、今日は……ですか?」






「当たり前だろ?まぁ、卒業までには名前だけで呼べるようになってくれよ。」






「―――っど、努力します。」






そう言った私の言葉に、先生は『待ってる』と小さく囁いた。






先生、今のは反則だよ。





気づいてないかもしれないけど、『卒業までには』とかこれからも一緒でいることをそんな風に当たり前のように言われたら、嬉しくなっちゃうよ…。





「あ――…幸せだぁ…。」





私を抱きしめる先生が、耳元で小さくそう呟く。





……先生、そんなに私に名前呼んでほしかったのかな?





たった一回名前を呼んだだけなのに、こんなに無邪気に笑ってくれるなんて。






「ふふ、先生可愛いですね。」





「は?可愛くねぇよ。」





先生がこんなにも喜んでくれるなら、たまには名前で呼んであげようかな。






それに、いきなり名前で呼んだら、きっと真っ赤になって照れてくれるだろうしね。












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