それぞれのstory。
「帰る。」
そう一言溢すように言い、近くの鞄をひっ掴んで透琉の返事を聞く事無く家を飛び出した。
「朱音!!」
そう叫んだ彼の声が聞こえたけど、もう本当にどうしようもなく不安で不安定で…ただただ走った。
目的もなく走ってると、急に後ろから腕を掴まれて引き留められた。
振り返ると、それは勿論……透琉の手で。
透琉は私と同じく荒く呼吸をしていた。
それで、急いで追いかけてくれたんだと分かったけど、冷静さを欠いた私には相手を思いやる余裕は残ってなかった。
「離して!!」
「朱音。」
「離して!!離してよ!!
何で追いかけてくるの。
ほっといて!!」
冷静に私を呼ぶ透琉に答えないで、私は叫んだ。