それぞれのstory。
あれは…高校の卒業式の日。
式も終わって、何故か透琉は急に『行きたいとこがある。』と言い出した。
私は何処に行くのかは分からなかったけど、とりあえずついてった。
ちょっと遠いみたいで透琉の家に寄って、車で向かった。
そこは、何回か透琉と行った事のある、海だった。
でも、今の季節はまだ春。
3月の始めだし、気温もまだまだ低い今、当然かなり風も冷たい。
さすがに外に出るのはやめ、海岸沿いに止めた車に乗ったまま、話す事にした。
始めは、高校での思い出とか話してた。
けど、何処か透琉は落ち着き無くて。
「どうしたの??」
その私の問い掛けで話す決心をしたらしく…一回頷いてこっちを見て話し出した。
「朱音も知ってると思うけど、俺は医者になりたい。」
「うん。」
「その為にたくさん時間かかるし、正直会う時間も少なくなると思う。」
「うん…分かってる。」
私は、真剣に話す透琉に返事を返しつつ、聞きもらさないように話を聞いた。
「けど、俺がちゃんと医者になって仕事し始めたら、結婚してくれないか??」
「えっ?」
考えてなかったわけでも、嬉しく無いわけでもないけど、透琉からそう言ってくれた事に驚いた。
「確かにまだまだ先だし、まだ安物しかあげられないけど…これ、予約の指輪。
朱音さえ良ければ、はめててほしい。」
決して押し付けるような言い方ではなく、あくまでも私の意見を聞いてくれるようにそう言ってくれた。