それぞれのstory。
『お帰り。』
ドアが開くと少しだけ顔を出して、少し大人びた歩がそう言った。
弟の歩は、私の5歳年下。
早くに母を亡くしたので、小さい頃は泣き虫で私にベッタリな甘えん坊だった。
だから、彼があの事故の後に生きる気力を無くした私に、『俺が姉ちゃんを護るから。』って言ってくれた時はかなり驚いた。
当時、中学生の歩は知らない間に成長して、強くて思いやりのある男の子になっていたから。
今では更に大人びていて…ううん、彼はもう大人だ。
地元でも有名な大学を今年の春卒業して、4月から社会人。
歩とはパパよりは会ってたけど、大学に入った時から会う機会は減っていたから。
彼は今でも実家暮らしで会社にもそこから通ってる。
てっきり大学出たら、さすがに一人暮らしするかと思ってたけど、パパも1人になっちゃうし。
パパなら止めないんだろうけど…気を遣ったのか、引っ越しが面倒なのか分からない。
そう言った話はした事ないから、恋人が居るのかは不明。
過去に恋人が居たって聞いた事もないし。