それぞれのstory。
高校に入って、まだ間もない頃…出会いはホントにベタなものだった。
私が移動教室なのに、1人遅れて向かってて、死角になってた曲がり角で反対側から来た透琉と勢い良くぶつかった。
「いったぁ!!」
「ってぇ…。」
お互い暫く頭を押さえてしゃがんでた。
「ごめん。大丈夫??」
先に立て直したのは透琉で、私がぶつかったのが悪いのに、そう優しく声を掛けてくれた。
「はい。
ごめんなさい…急いでてぶつかって。」
「ううん。
こっちもちゃんと確認してなかったから。
大丈夫??」
そう言って、心配そうに見てくれた。
その時見上げた私の目線より大分高い位置にあった顔は、繊細そうで綺麗だった。
私は『はい。』としか返せないくらいに見惚れるほどに。
「ここ、死角になってて危ないから気をつけてね。
あっ、俺は1年A組の香月 透琉。
何かあったら、いつでも来な。」
「ありがとう。
私は、1年C組の遠藤 朱音。
ホントにごめんなさい。」
「ううん。
あっ、急いでたんでしょ??
もう行った方が良いよ。」
「えっ!」
私はそう言われて、携帯を取り出し、時間を確認した。
チャイムが鳴る1分前だった。
「ホントだ。
じゃあ…。」
「うん。またね。」
透琉は優しく手を振って見送ってくれた。
私も控えめに振り返して向かった。
それから、少しして知った事。
彼は新入生の中でも片手で数えれるくらい順位が上のモテる人だった。