それぞれのstory。
一枚の写真
オシャレなカフェで、行われている結婚式。
新郎が先に姿を現し、普段クールというより仏頂面である彼の表情は珍しく少し緊張をしているようだ。
たくさんの家族・友人・同僚などが微笑ましそうな表情で見守る中、ドレスを身に纏いいつもより美しさを増した新婦が現れ、レッドカーペットの先に立つ新郎を瞳に写すと緊張を読み取って少しの涙と微笑みを浮かべた。
それは少しの恥ずかしさと有り余るほどの幸せを噛み締めるような表情で、ゆっくりと歩を進めた。
勿論、新婦の隣には娘の門出に複雑な表情を浮かべている父親が腕を組んで同じスピードで歩いているが、俺は新婦の姿に釘付けになってしまった。
きっと、この場に居るほとんどの人がそうだろう。
だけど、新婦も…そして、新郎もお互いしか映っていないように見つめあっていた。
俺は1枚の写真を取り出した。
2人の少年と1人少女が写っている写真。
3人とも制服姿で、少年のうち1人と少女は笑顔で、もう1人の少年は無表情というよりぶすっとしたような仏頂面な表情をしている。
高校生の頃の俺、瀬戸 悠-セト ハルカ-とこの結婚式の新郎である俺の弟であり、唯一の家族の瀬戸 蒼-セト アオイ-。
そして、新婦の羽柴 神無-ハシバ カンナ-の今よりも幼さを残した姿が写し出されていた。
俺達は同じ高校の部活が一緒で、高校2年の年に神無が入学してきて、その次の年に蒼が入学して知り合った。
創部年数も浅ければ、部員の数が足りず入部希望者が居なければ直ぐに廃部になりかけのうちの部に神無が