恋夜桜
壱
はあはあとあがる息が苦しくて、酸素を求める身体が熱い。
私は夜の通学路を全速力で疾走している。
駅までの道は、綺麗に舗装された歩道が整備されていて、それが救いだった。
今年から高校生になった私は、地元から離れた進学校に電車で通学している。
田舎だからか電車の本数が少なくて、この電車を逃すと危ないのだ。
私はスクールバッグをリュックみたいに背負いなおして、ボルトみたいに駆けた。
一歩踏み出すたび、闇夜の風に真新しいスカートが翻る。
四月の午後七時。
綺麗な満月の晩だった。