恋夜桜
私は背負ったスクールバッグを降ろして、いつもどおり肩に掛けなおした。
右肩に教科書の重みが伝わる。
「連絡、いれないとなあ」
遅くなるときは、親が駅まで迎えに来てくれることになっている。
携帯を取り出し、手早く到着時間を知らせるメールを打つ。
液晶の光が眩しかった。
軽くため息をつくと、携帯をカーディガンのポケットにしまい、一列に並ぶ街灯を横目に歩く。
こつこつとローファーが舗装された地面を打つ。
次の電車まで、時間はまだたっぷりあった。
頬を撫でて髪をそよがせる風に、私は何かを予感した。
今日はいつもと違う気がした。