と・な・り。
絶対、今のあたしは今までにないあほ面をしていたに違いない。
だって、それはあまりに衝撃的……いや、予想外の言葉だったから。
「えっ? だって………。みんな、隼人は香取さんと付き合ってるって………。この前だって、香取さん、家まで迎えに来たぐらいだし………」
「まあ、あそこまでされると勘違いされても仕方ないと思うけど………付き合ってないよ。美優から聞いたその翌日に、ちゃんと断ったから」
ニコッと笑う隼人の顔を見ているうちにあたしは全身から力が抜けていく。
「うわっ、ちょっと美優?」
脱力しながら、体に力が入らなくて、不可抗力ながら隼人にもたれかかってしまうあたしの体。
いつものあたしならすぐにハッと気づいて体を離すのだけど、今はそんなことどうでもよかった。
あたしは隼人の服の腕の袖をギュッと掴んでから、顔を上向け、隼人のことを見る。
「嘘………じゃ…ないんだよね…? 本当…なんだよね?」
震える声で隼人に聞くあたし。
隼人は少し驚いた顔をしながらも、優しく笑いながら「ああ…」と答えてくれた。
「あたし、隼人のこと好きでいていいの?」
肯定の言葉を聞いてもまだ不安で、同じようなことを聞いてしまう。
「ああ。好きでいてもらわないと困る。俺はずっと好きだったのに、やっと気づいてくれた時に諦められても困るからな」
「え…? 嘘………」